マハレの南のケチな川

中村美知夫

2004年9月6日から6日間、マハレ南部の広域調査に出ました。調査仲間の西江さん、キトペニさんとジュマさん、それと国立公園のムウィヌカさんら、総勢9名でのサファリです。

 初日、ボートでルブグェ河口まで行き、尾根沿いにカクンジラ山を目指します。チンパンジーの痕跡を確認しながら進み、たまに休憩を入れつつ、あまり山歩きに慣れていない国立公園の一行を待ちます。カクンジラを8合目ほどまで登った頃、激しい雷雨。いったん大木の下で雨宿りをします。山頂から後の薮を抜けるのに大幅に時間がかかり、結局その日は尾根近くの小さな谷に水を見つけて泊まり場としました。

 二日目、尾根をしばし東進した後、カティンバの谷筋へ。かなりの勾配で、半分滑り落ちるように進みます。谷音が聞こえ出すとそれにつれて深くなる薮を、キトペニさんが持ち前の体力で薙ぎ払い、ようやく川岸に出ました。乾季のさなかでも水量は豊富です。昨日今日のオーバーペースで疲れもたまってきたようなので、日も高いですがこの日はこのカティンバ谷で泊まることにします。冷たい渓流で水浴びをしたり、昼寝をしたりして、各々の午後を過ごしました。

 三日目、カティンバ左岸を登ります。これまたなかなかの傾斜です。登りきってしまうと、そこはニェンダ台地。後は平らな地形が続きます。かなり距離はありましたが、一気にルンビエ川まで行き、宿営。ここも水量は豊富でした。  四日目、この先も平らな地形ですので、足並みも軽くムシランブラ川を目指します。地図で見る限り支流も多く、なかなか立派そうな川です。出発前に私たちの計画を聞いていた西田さんが、「ムシランブラ?ケチな川だけど、水はあるよ」と言ってくれていたので、この日の泊まり場として期待していたのでした。

 着いてみて呆然。川床は乾ききり、見つかったのは、どろどろのわずかなたまり水だけでした。川幅が広いわりには、本当に「ケチな川」だったのでした。まだ昼過ぎだったので、私たちはやむなく次の水場を求めて灼熱の原野の中を再び歩き始めました。

 残り少ない水筒の中身を気にしながら歩くこと10数キロ。国立公園を出て、ムニャマシ川にたどり着きました。その日はその近くのミゴンゴ村泊。翌日数時間でタンガニイカ湖岸の町カリヤに着きました。こうして私たちの乾いた調査は終わったのでした。

 ※この広域調査で確認したチンパンジーやその他の動物の生息状況や調査ルートなどは、Pan Africa Newsに掲載予定ですので、そちらをご覧下さい。



水量の豊富なカティンバ川



ケチな川ことムシランブラ


(なかむら みちお、京都大学大学院理学研究科)




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