Pan Africa News 14(2)の記事から

コンゴ民主主義共和国に大規模な熱帯雨林保護区が新しく設立されました
(by ハーレィ・ミッシェル) オリジナルの英文記事へ

 ボノボコンサベーションイニシアチブ(BCI)は、コンゴ民主主義共和国政府とともにサンクル自然保護区の設立を進めてきた。サンクル自然保護区は、約3万平方キロの巨大な熱帯雨林地帯で、近年は戦争や森林伐採、ブッシュミートのための狩猟によって荒廃の危機にさらさられていた。今回の保護区設立によって、絶滅の危機に瀕しているボノボ、オカピやコンゴ固有のキリン、象などといった多くの動物たちのすみかが守られるだけでなく、地域住民の経済発展に大きく貢献することが期待されている。


ギニア・ニンバ山生物圏保護区のゴエラ地域とデレ森林におけるチンパンジーの予備的調査
(by グラニエ・ニコラ、マリークロード・ユイネン、松沢哲郎) オリジナルの英文記事へ

 ニンバ山生物圏保護区のチンパンジー生息情報は不足している。2006年・2007年に68日間、ゴエラ地域とデレ森林でチンパンジーの生息状況を調べた。ゴエラ地域では、チンパンジーのベッド・糞・足跡・アリ釣り棒などを発見した。発見場所から、チンパンジーが標高の高い植生の限られた地域を選好して利用していることが示唆された。一方で、多数の密猟の証拠を発見した。チンパンジーは、食物不足か密猟者を避けて森林の一部を利用していると考えられる。デレ森林では、非常に古いベット1つしか発見できなかった。この地域では最近伐採があり開拓・居住が進み、森林の断片化が著しい。今後も継続して調査を続けていく必要がある。


ガボン・ポンガラ国立公園におけるチンパンジー密度評価とチンパンジーのベッドの作り方
(by チャールズ‐アルバート・ピーター、マリークロード・ユイネン、ロザリン・ブードゥル‐ジャマール) オリジナルの英文記事へ

 これまでよりも精度の高い方法を用いて、ガボン・ポンガラ国立公園に生息するチンパンジー個体群密度を推定した結果、0.671個体/km2であることがわかった。ベッドの集まりとその分布状況からは、北側の古い二次林帯と南側の攪乱されていない森林を中心に2つのグループが生息していることがわかった。また、この地域のチンパンジーは、豊富に生息する樹種とは異なる特別な樹種をベッドのために利用していることがわかった。一方、公園内で、密猟や伐採といった人間活動が行われていることも明らかになった。チンパンジーの個体数を維持し、公園内での違法な活動を取り締まるためにも、公園の維持・管理計画を早急に進展させる必要がある。


緑の回廊計画における植林の評価
(by 松沢哲郎) オリジナルの英文記事へ

 ギニア・ボッソウのチンパンジーが遺伝的に孤立する要因となっているニンバ山との間のサバンナ地帯に「緑の回廊」を作る計画を遂行するにあたり、試験的に植林した0.36haの植物園の8年後の評価を報告する。チンパンジーの採食樹を含め、植えた木の25%は生き残り、さらに多様な先駆植物が自然侵入して森林再生を助けることもわかり、苗木の捕食や野火の被害を防げば、サバンナを森林に変える事業が可能であるという結論を得た。


ヤマアラシに遭遇した野生チンパンジーの探索的威嚇
(by 松阪崇久) オリジナルの英文記事へ

 タンザニア・マハレのチンパンジーがほとんど出会わない夜行性哺乳類であるヤマアラシと遭遇した場面を観察した事例を報告する。背を向けて防御姿勢をとるヤマアラシに対して、未成熟個体3頭とオトナ雌1頭が、近くの地面を叩いたり蔓を揺すったりという行動を示したが、狩猟や遊びの意図はないと解釈され、むしろ警戒しながらも未知の動物を刺激して、その危険性や反応を学習するための探索的威嚇とみなすのが適当と結論した。


チンパンジーに見られる皮下腫瘤
(by西田利貞、藤田志歩、稲葉あぐみ、郡山尚紀) オリジナルの英文記事へ

 マハレのチンパンジーは、直径5センチ以上にも達する半球の形をした腫れ物を下腹部に作ることがある。性・年齢に関わりなくできるが、5歳までの赤ん坊に多いようだ。こんな腫れ物ができても、腫瘤部を木の幹にぶつけないようにしたり注意を払っている様子はなく、平気でレスリングしたりしている。いわゆる「おでき」ではなく、良性腫瘍あるいは寄生虫感染が疑われる。




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