Pan Africa News 23(1)の記事から

マハレのチンパンジーの相互性皮触り行動
(by 西江仁徳) オリジナルの英文記事へ

 チンパンジーのメス同士の相互性皮触り行動(Mutual genital touch: MGT)は、これまでギニア・ボッソウでの観察記録しかなく、タンザニア・マハレでは観察されたことがなかった。今回2014年の調査で、マハレM集団のメス同士のMGTを2回観察した。1回はオトナメスとワカモノメスのペアで、もう1回はオトナメス同士のペアで観察された。いずれも個体同士が出会った直後にMGTが起こっており、メス間の一種の挨拶行動と考えられる。MGTの観察頻度は非常に低いため、最近集団内で開始されたか、集団内の一部個体のみがおこなっている可能性もあるが、当該ペア間では「ごく自然に」MGTを交わしており、ある程度集団内に普及した慣習的な行動パターンとなっている可能性も示唆される。


アカンボウ期のボノボが負傷した他個体の不自由な身体の動きをまねた:コンゴ民主共和国ルオー保護区ワンバ村における観察事例
(by 戸田和弥、柳興鎮、林美里、古市剛史) オリジナルの英文記事へ

 他個体の行動を再現する「模倣」は、新規行動を獲得する「社会的学習」手段のひとつである。これまでの認知実験から、大型類人猿の「模倣」は、モデルが示した行動の結果を再現する「目的試行型」であり、モデルの行動形式そのものを再現する「真の模倣」とは異なると考えられている。この観察事例では、野生ボノボのアカンボウ(35ヶ月)による、「ものまね」について報告する。そのアカンボウは、負傷した若メスが左手の使用を避ける行動「指を手首の内側に折り曲げて固定する」に類似した行動をとった。このような他個体の身体の動きに注目した「まね遊び」の研究は、大型類人猿における「模倣」の発達的側面の理解につながるかもしれない。


マハレ50 周年記念展・シンポジウムに対する一般参加者の評価:質問紙調査
(by 井上紗奈、保坂和彦) オリジナルの英文記事へ

 2015年9月に東京で開催した公開イベントで実施したアンケート調査の結果を今後のアウトリーチの展開に役立てるため公表する。回答者の半数以上は50〜60代であったが、学生参加者も含まれていた。60〜70代は新聞記事、20、50代は友人が主な情報源であった。また、子育て世代は動物園に置かれたチラシを見て興味をもったらしい。今後もシンポジウムがあれば参加したいとする回答が多い一方で、若い層はサイエンスカフェ、高齢層は公開講座にも興味があることが示唆された。イベントに対する満足度・理解度が高かった一方で、期待したものと違うと感じた参加者もいたらしい。特定の聴衆に小規模に行えるアウトリーチの実施が今後の課題である。




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