第1 回MWCS 特別奨学金事業
奨学生からの手紙B

マハレ野生動物保護協会(MWCS)日本代表 保坂 和彦


 第1 回特別奨学金事業の受給者ブタティ・R・ニュ ンドー氏(28)が、昨年12 月に実施されたムウェ カ・アフリカ野生生物管理カレッジ(野生生物管 理学ディプロマ2 年コース)の卒業試験に合格し、 2013 年10 月25 日の卒業式で念願のディプロマ を授与されました(写真1)。2013 年1 月から3 ヶ 月間、ニュンドー氏は、協会が奨学生の義務とし て課した教育ボランティア活動を実施しました。 彼がMWCS に提出したボランティア活動報告書 を一部編集し、翻訳したものを以下に掲載します。 彼は、これらの実績を活かして、ゆくゆくはマハ レ山塊国立公園のパークワーデンにのぼりつめて 郷里の自然環境保全と地域の教育事情改善に力を 尽くしたい、と心強い言葉を私宛の電子メールに 記してくれました。協会としては、彼に対して可 能な支援を今後も続けるとともに現地活動にて連 携し、事業の成果をよく検討して、今後の地域参 加型環境保全(コミュニティ・コンサベーション) の方針策定に活かしたいと思います。会員及び支 援者の皆様には、いっそうのご支援、ご助言をお 願い申し上げます。



写真1 ブタティ・R・ニュンドー氏(卒業式終了直後)


(ほさか かずひこ 鎌倉女子大学)


郷里での教育ボランティアを体験して

マハレ山塊国立公園 ブタティ・R・ニュンドー


 ムウェカでの学業を終えた私は郷里に戻り、3 ヶ月間のボランティア活動に従事しました。私は、かねて から、私を育んだトングウェのコミュニティに何らかの貢献をしたいと考えてきましただけに、このような 機会が与えられたことは願ってもないことでした。

教育ボランティアとしての活動は、2013 年1 月中旬からブヒング中学校で始めました。この中学校には 6つの集落から生徒が集まっており、大きなコミュニティへの貢献という意味で私にはこの学校でのボラン ティアは意義深いものでした。初日には、教職員や生徒たちへの紹介があり、温かく迎え入れていただきま した。

 私が担当したのは、フォーム1〜4(14 歳〜 17 歳クラス)の生物、フォーム3(16 歳クラス)の地理です。 先生方も生徒たちもとてもフレンドリーに接してくれたので、環境に馴染むのに時間はかかりませんでした。

 自分たちのコミュニティで育ち、高等教育を終えて戻ってきた私が学内にいることは、生徒たちに良い刺 激を与えているように見えました。私は私で、生徒たちが熱心に新しい考えを知ろうとしていること、とく に野生生物や環境保全について関心があることに勇気づけられ、彼らのためにしっかり働こうという気持ち にさせられました。生徒たちは、学校周辺に植林したり、(森林破壊につながる無秩序な)火入れを止めさ せたりといった活動に精を出していました。私は、彼らの関心に応えて、いくつかのクラスやルーツ&シュー ツ・クラブの生徒たちを相手に、環境保全に関する話をしました。

 このような私の奮闘ぶりを見た学校当局から、私は体育指導や学校カウンセラーの助手も任されました。 その仕事で私は学校のサッカーチームの対外試合を3 回指導し、2 勝1 分けの成績を収めました。また、学 業に関する生徒の相談にも応じました。私の助言を聞いた生徒が努力して向上していく様子を見守ることは 本当に素晴らしいことでした。

しかしながら、僻地ゆえ、ブヒング中学校も、施設や備品が不足するなど、多くの問題を抱えています(編 集部注:報告書原文には、学校職員に訊いて作成された長い要望品目リストが書かれていましたが、ここで は割愛します)。

3 月上旬、マハレ山塊国立公園で観光キャンプを運営するノーマッド・タンザニアの協力を得て、18 名 の生徒を教員1 名と私で引率し、公園への日帰りボート遠足を実現しました。私の役割は、彼らのガイドで もあり、野生生物の専門家でもあり、現地出身者でもありました。公園に関して私にできる限りの説明をし ました(写真2)。マハレの歴史、保全活動、資源、チンパンジー、タンガニーカ湖と湖固有のシクリッド 類…。当時、チンパンジー調査のため滞在していた花村俊吉氏(京都大学)と会う機会もありました。生徒 たちは遠足を大いに満喫し、また、マハレ地域で行われてきた保全活動の意義も十分理解したように思われ ました。

 最後の1 ヶ月間は、カトゥンビ小学校での教育ボランティアに費やしました。カトゥンビは出身集落で あり、私にとっても集落の人々にとっても特別な意味がありました。5、6 歳児の幼い子どももいますので、 しつけを含め教育には多大な労力を要しますが、カトゥンビ小学校は深刻な教師不足が続いています。私は、 4 〜 7 年生の理科と地理を担当しました。教師不足以外にも、机や体育用具の不足、修繕が必要な校舎など、 学校はさまざまな問題を抱えていました。

 3 ヶ月間の教育ボランティアを終え、このようにブヒング中学校、カトゥンビ小学校で働く機会が与えら れたことを、とても喜ばしく、また誇らしく思います。繰り返しになりますが、マハレ野生動物保護協会には、 私のムウェカでの2 年間の修学を支援していただいたこと、また、今回のボランティア活動中の生活支援を いただいたことに心からの謝意を申し上げます。


写真2 マハレでの野外授業。
撮影した花村俊吉氏によると、生徒の質問に対応する
ブタティの様子は当意即妙で頼もしいものであった。



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