Pan Africa News 19(1)の記事から

自分の脚との遊び:ボッソウのワカモノオスチンパンジーによる想像的社会遊びの例?
(by 中村美知夫) オリジナルの英文記事へ

 ギニア共和国ボッソウの10歳のワカモノオス・ポニは、プレイフェイスやプレイパントを表出しながら、自分の左脚に対して、掴む、引っ張る、噛む、叩く、地面に押し付ける、などの行動をとった。通常遊び相手がいる際に表出されるプレイパントと、他個体に向けられる行動要素が含まれているため、マハレのチンパンジーから報告された想像的社会遊びによく似ているといえる。他の解釈の可能性も排除できないものの、この例はポニが自分の左脚をあたかも社会的遊びの相手としてみなしたと解釈できる。ヒト以外の動物に想像的社会遊びが見いだされる可能性を排除してしまうのは尚早かもしれない。


マハレ(タンザニア):チンパンジーの出産
(by 座馬耕一郎, 坂巻哲也, RSキトペニ) オリジナルの英文記事へ

 めったに観察されることがない野生チンパンジーの出産前後について報告する。2000年5月26日14:44、オトナメスのジュノーが新生児を抱いているのが確認された。12:01には抱いておらず、この間に出産したのだろう。出産前、オトナオスがジュノーのお尻を検査したり毛づくろいしたりするのが見られた。出産後、ジュノーは新生児から延びているへその緒の端を口にくわえて移動し、発情メスらが間近で観察していた。オトナオスがジュノーを攻撃した際には経産メスの1頭がジュノーの応援に駆けつけた。胎盤は見つからず、おそらくこれまでの報告と同様、出産直後に母親が食べたと考えられた。


ウガンダ、ブドンゴのチンパンジーにおける昆虫食の生態学的側面
(by Sヘッジズ, WCマックグルー) オリジナルの英文記事へ

 アフリカのほとんどの調査地でチンパンジーの昆虫食が見られるが、ウガンダは例外的に少ない。その理由を探るためブドンゴのチンパンジーを調査した。社会性昆虫の生息状況や昆虫を取る道具になりそうな木や草の数など、昆虫食の条件となる生態学的側面は、他の調査地とほとんど同じだった。調査者による実験では、釣りをするよりも巣を壊した方が効率的にシロアリを採取できる種とそうでない種があるのが明らかになったが、どちらの種もチンパンジーが食べる種ではなかった。ブドンゴのチンパンジーで昆虫食が見られないのは、文化的知識がないからと考えられた。


セネガル、ニオコロ・コバ国立公園のチンパンジー、アシリク個体群の最新情報
(by JDプリーツ, Rバライラ, Wカマラ, Sリンドシールド, JLマーシャク, Aオルソン, Mサディアコ, Uヴィラロボス‐フローレス) オリジナルの英文記事へ

 セネガルのニオコロ・コバ国立公園に住むチンパンジーとその他の哺乳類について2012年におこなった調査の報告をする。6.77kmのトランセクトの調査からチンパンジーの密度は1km2あたり1.28個体と推定され、2000年の調査時(0.13)より値が大きかった。自動車や徒歩で115.7kmを踏査したところ840個のベッドを発見したが、この値は2000年の調査時より少なかった。チンパンジーは2集団いると推定された。その他の動物は551kmの踏査中16種476個体を記録した。密猟者の発見率も増加しており、より良い保護対策をとる必要がある。  




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