Pan Africa News 17(2)の記事から

ゴンベ国立公園でのチンパンジー研究50周年
(by マイケル・L・ウィルソン) オリジナルの英文記事へ

 タンザニアのゴンベ国立公園でジェーン・グドールが野生チンパンジーの研究を開始してから2010年で50年目にあたる。野生チンパンジーの最初の長期研究地として、ゴンベはチンパンジーの行動と生態に関する数々の新しい知見をもたらしてきた。これまでのゴンベにおける科学的成果の達成を祝って2010年9月13日に第23回国際霊長類学会でおこなわれた2つのシンポジウムについて紹介する。


マハレの「つつき」型ソーシャルスクラッチ健在
(by中村美知夫) オリジナルの英文記事へ

 マハレのチンパンジーのソーシャルスクラッチは「ストローク」型がほとんどだが、アコというメスが「つつき」型を示すという報告があった。アコは2004年につつき型をやめ、娘のアカディアはつつき型を継承しなかったと報告されている。しかし、2005年から2010年の観察で、アコはいまだにつつき型をおこなっていること、回数は少ないがアカディアもつつき型をおこなっていたことが確認された。


ゴンベ国立公園のカサケラチンパンジーによるガラゴ狩猟
(by ロバート・C・オマリー) オリジナルの英文記事へ

 ゴンベには、オオガラゴ属1種、ガラゴ属2種が棲息しているが、チンパンジーによる捕食の報告はなかった。今回、2008年と2009年にかけての調査にて、ショウガラゴ捕食が2例観察された。狩猟者はそれぞれゼウス(15歳の雄)とゼラ(10歳の雌)であったが、彼らは兄妹であり、隣接集団から移入してきた雌の子であるという点が興味深い。ゼラの狩猟はゼウスのガラゴ狩猟を目撃した1年8ヶ月後に発生したものである。


セムリキのチンパンジーはアブラヤシを無視
(by ウィリアム・C・マックグルー,リンダ・F・マーシャント,シャーロット・ペイン,ティム・ウェブスター,ケヴィン・D・ハント) オリジナルの英文記事へ

 チンパンジーによるアブラヤシ利用は、マハレ(タンザニア)のように全く食べない地域もあれば、ゴンベ(同)のように果皮を食べる地域、ボッソウ(ギニア)のように堅い種子を石で割ってナッツを食べる地域もある。このような多様な広がりにおいてセムリキ(ウガンダ)はどこに位置するか知るため、ヤシの木立4カ所をモニターし、さらに野外実験を試みた。その結果、当地には利用可能なヤシも堅果を割る道具もあるのに、チンパンジーが使わないことがわかった。これを文化的とするのは早計であり、今後の調査を要する。  


野生ボノボでみられた果実と肉の分配に関する事例報告
(by 平田聡) オリジナルの英文記事へ

 ワンバの野生ボノボで、ウロコオリスの捕食が観察された。オトナ雌のユキが捕まえて食べ、肉の一部は別のオトナ雌のホシに分配された。同時期に、同じくユキとホシの間で、大型果実のジャングルソップの分配も観察された。これらの事例において、ホシが要求行動をおこなった際に食物の一部がユキからホシに渡る割合を比較すると、肉の分配の場合はその割合が低かった。ただ、果実の場合も肉の場合も、ユキからホシに渡ったのは、価値の低い部位、もしくはごく少量の部位であるという共通点があった。




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