Pan Africa News 17(1)の記事から

ブリンディ(ウガンダ)で発生したヒトとチンパンジーの異様な衝突
(by マシュー・マックナレン) オリジナルの英文記事へ

非保護森林であるブリンディのチンパンジーはしばしば農作物を荒らすため、地元民との摩擦が絶えない。ここで報告する事例は、調査集団の遊動域の北東の外れにあるカーワンゴという地域の農場で見られた異様な衝突である。マンゴを盗むため侵入したオトナ雄のチンパンジーが農場主の自宅玄関のガラスに映る自らの鏡像に反応し、あたかも隣接集団に対して行うかのような威嚇・攻撃を繰り返した。農場主が銃声で威嚇しても周辺に留まるなど、通常、ヒトと遭遇したときには見られない執拗な攻撃と興奮が観察された。



ニュングウェ国立公園(ルワンダ)の野生チンパンジーにおける道具使用の初観察:新しい蜂蜜採り方法
(by ジュリアン・イーストン) オリジナルの英文記事へ

 野生チンパンジーが道具を使用して蜂蜜を採ることはさまざまな集団で報告されてきたが、ニュングウェ国立公園のチンパンジーは、これまでに報告のない別のやり方で蜂蜜を採ることがわかった。1頭のオトナオスが、口で樹皮や葉を剥いだ小枝を、手で持って蜜蜂の巣穴に押し込むがうまくいかず、身体を上下逆さにしてその小枝を歯で挟み、体重をかけて巣穴に押し込んだ。そのあと小枝を手に持ち替えて、先端についた蜂蜜を唇で拭い取った。道具を顎で締めつけることで操作する例は、野生チンパンジーでは初の報告であり、本集団の保護やさらなる調査が必要である。



掌中の鳥:ボッソウ(ギニア)のチンパンジー、ヒナフクロウを捕らえるも食わず
(by スザーナ・カルボルハ、山梨裕美、山越言、松沢哲郎) オリジナルの英文記事へ

 ボッソウのPLというワカモノ雄のチンパンジーがヒナフクロウを捕まえて弄んで死なせた様子が二回の事例について記録できた。ボッソウには獲物となるような動物がほとんどいないため、狩猟・肉食はきわめて稀である。今回のように、若い個体がたまたま小動物を捕まえても食べ物としては扱わず、人形のように弄んだ後、放棄する。かつてハイラックスを捕まえた事例においても同様であった。今後、資源利用可能性や獲物の分布・密度を調べていけば、なぜボッソウで追跡狩猟が欠如しているのか、説明がつくかもしれない。



パフィーの癖は父性遺伝?
(by 西田利貞) オリジナルの英文記事へ

2009年8月、9歳のチンパンジー雌・パフィーが、「乳首いじり」をするのが初めて見られた。彼女が多くの時間を過ごした母親、兄、養母は「乳首いじり」をしない。 井上英治さんのDNA父子判定の結果、パフィーはオトナの雄アロフの娘であることがわかった。パフィーはアロフと親しかったという証拠はないので、「乳首いじり」の癖は、遺伝に影響されることがわかった。  






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