Pan Africa News 16(2)の記事から

2007年に起きたマハレMグループの政権交代
(by 稲葉あぐみ) オリジナルの英文記事へ

 マハレのMグループにおいて2007年、β雄のピムがα雄のアロフに挑戦し、政権を奪取した。8月にはアロフがピムにパント・グラントをするのが観察された。アロフはその後第2位にとどまったが、ピムにとっての脅威はむしろ年少のプリムスであると推察された。老齢雄のカルンデはピムとアロフの間で政治的に立ち回っていた。また、2003年以来、単独で行動することの多かった前々代のα雄、ファナナがこの政権交代後にMグループに復帰した。



フォンゴリ(セネガル)のチンパンジーがパタスモンキーを捕食
(by ジル・D・プルエ、ジョシュア・L・マーシャク) オリジナルの英文記事へ

 サバンナ環境のフォンゴリに棲息するチンパンジーがパタスモンキーを捕食することが2008〜2009年に初めて確認された。したがって、この地域のチンパンジーは、同所的に棲息する霊長類3種(他2種はサバンナモンキーとショウギャラゴ)のすべてを捕食することが明らかとなった。観察した3回の狩猟のうち2回が成功し、パタスの未成熟個体2頭が捕食された。狩猟者はいずれも、1〜2頭のオトナもしくはワカモノの雄であった。2頭のオトナ雄が、同時追跡型の連携した狩猟を行い、殺した獲物を分配した事例も含まれる。



森の「美的」センス?マハレのメスのチンパンジーがホロホロチョウの羽根を運ぶ
(by 中村美知夫) オリジナルの英文記事へ

 マハレM集団の老齢メスが、地面に落ちていたきれいなホロホロチョウの羽根を拾い30分以上運んだ。このような行動をするのが観察されたのは初めてである。このメスは、この羽根で遊んだり、何らかの機能を果たそうとしたわけではなかった。このメスが羽根を「美しい」と思ったのかどうかは証明不可能であるが、ひょっとすると直接的には役に立たないものを「美しい」と思うセンスがチンパンジーにもあるのかもしれない。



マハレにおいてみられた新生児チンパンジーの死:母親とその他のチンパンジー達の死体への反応
(by 郡山尚紀) オリジナルの英文記事へ

 マハレのMグループに移入して数年のベラが産んだ初めての子は死産と推定された。ベラは数日間、一人で死体を運んでいたようであるが、群れに合流した際、オトナオスに死体を奪われ、その後、取り戻すことはできなかった。そのオスは屍肉食に動機づけられて奪った可能性が高い。しかし、腐敗が始まっていたためか、死体の肛門などを調べたのみで放棄した。次にその妹が死体をまずくわえて運び、途中兄と同じように触った後、遊んだりしながらより長い時間持ち運んだ。このように死産の可能性が高い新生児の死体に対するチンパンジーの反応の観察記録は稀少であるため、報告する。



ゴンベ国立公園でみられたチンパンジー集団とヒョウの遭遇
(by アン・H・ピアース、with ウィリアム・C・マックグルーの紹介文) オリジナルの英文記事へ

 1974年、ゴンベ国立公園でチンパンジー集団とヒョウが遭遇する場面が直接観察された。大型類人猿にとって大型肉食獣の捕食がどのような意味を持つか見解が揺れている今日、稀少かつ貴重なデータであるため、当時ピアースが残した未発表の記録を公表する。ヒョウと遭遇したチンパンジー6頭は、ラーコール・ディスプレイ・追跡などを約20分間繰り返した。棒を使ってヒョウを追いはらうような行動はみられなかった。




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