Pan Africa News 15(1)の記事から

ジェーン・グドール博士と西田利貞博士が2008年度の「リーキー賞」を受賞、西田利貞博士が2008年度の国際霊長類学会の「生涯功績賞」を受賞
(by 編集部) オリジナルの英文記事へ

マハレのチンパンジーによる道具を用いた狩猟
(by 中村美知夫、伊藤詞子) オリジナルの英文記事へ

 マハレにおける道具を用いた狩猟行動を二例報告する。一例は、当時8歳のメスが木のうろに棒を差し込んでかき回した後、瀕死か死亡したリスを取り出したというものである。もう一例は巨岩の下にある穴を6頭のオスが代わる代わる覗きこみ、つるや棒などを差し込んでかき回していたという例である。チンパンジーの反応からなんらかの動物(おそらくハイラックス)が中に居たことは間違いないと思われるが、狩猟には成功しなかった。道具を使用した狩猟は観察されにくいものの、マハレでも繰り返しおこなわれている可能性が示唆される。


ウガンダ・ブドンゴ森林のソンソ集団のチンパンジーによる罠の除去
(by アマティ・スティーブン、バベテーラ・フレッド、ヴィッティグ・ローマン) オリジナルの英文記事へ

 ウガンダでは罠猟による狩猟が野生チンパンジーの生存に深刻な影響を及ぼしている。同国ブドンゴ森林ソンソ集団のアルファ雄が、オトナ雌の手にからまった罠のナイロン紐を噛みちぎった結果、罠が取り除かれた事例を報告する。罠による負傷が成熟個体の3割に及ぶ当集団において、チンパンジーが罠を外すことに成功したことを示す間接的証拠は過去5年間に3事例記録された。今回は初の直接観察であるが、いかなる学習過程、認知理解によりこの行動が引き起こされたか、推測の域を出ない。さらなる継続観察と他地域研究者との情報交換が求められる。


マハレのチンパンジーの濡れ毛を使ったシロアリ捕獲行動
(by 清野(布施)未恵子) オリジナルの英文記事へ

 結婚飛行のために空中で渦を作り群飛するシロアリを、Mグループのオトナのメスチンパンジーが樹上で捕まえて食べる行動を観察した。この捕獲行動のユニークな点は、雨で濡れつづけている腕の毛にからみついたシロアリをつまみとって食べていたという点である。今回食べられていたシロアリは、年に一度しか結婚飛行を行わない。こういった、稀だが季節的なイベントに対して、チンパンジー集団が行動レパートリーを共有しているのかどうかといったことを検討するためにも、今後も継続してデータを集める必要がある。


なぜマハレのグァバの木を切ってしまうのか?導入植物の駆除に対する懸念
(by 西田利貞) オリジナルの英文記事へ

 2007年10月、マハレ公園のカシハからカンシアナの間に生えているグァバの木が、タンザニア国立公園の協力の下、フランクフルト動物協会によって伐採された。マハレ公園管理計画書には、公園内のすべての外来植物の駆除が予定されている。グァバやアブラヤシなどの外来の食用植物は侵略的な植物のように思われるているようだが、これらはかつて村があった場所に生えているだけで侵略的ではない。それどころか、チンパンジーの重要な食物源となっており、彼らが種子散布してその分布が広がったのである。アブラヤシやマンゴーは、永年居住してきたトングェ人の文化遺産でもあり、これらを駆除することは、チンパンジーの生存を脅かすだけでなく、観光・教育資源をも破壊することになる。




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